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『ひきこもりはなぜ「治る」のか』斎藤環著【要約・感想】

更新が1年以上空いてしまいました…。
気長にコンスタントに続けていきたいです。

今回もひきこもりに関する本のご紹介です。
斎藤環さんの『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』(ちくま文庫)
を読了しましたので、その要約と感想をお届けします。

この記事にはこのようなことが書かれています。

『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』はこんな人にオススメ
『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』の著者斎藤環さんはこんな人
『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』の要約・学べる事


この記事を読めば『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』の要点が理解でき、
「さらに詳しく読んでみるか、要約だけでも満足できるか」
どうかが判断できるようになります。

『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』はこんな人にオススメ

今回の本も、ひきこもりの理解や家族の対応法に興味がある方におすすめです。
この本は、精神分析理論を用いてひきこもりの精神病理を解読し、家族の対応法を紹介する本です。
ひきこもりの本人やその家族、また関心を持つ方々にとって、有益な知識とアプローチの仕方を紹介しています。

 

『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』の著者斎藤環さんはこんな人

以前も紹介しましたが、
斎藤環先生は、日本の精神科医であり、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授です。
先生は思春期・青年期の精神病理学を専門とし、ひきこもりの治療・支援に取り組んでいます。
著書には『社会的ひきこもり』、『「ひきこもり」救出マニュアル』、『ひきこもり文化論』などがあります。

 

『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』の要約・学べること

目次は以下の通り。

【本書の内容】

第1章「ひきこもり」の考え方:対人関係があればニート、なければひきこもり
第2章ラカンとひきこもり:なぜ他者とのかかわりが必要なのか
第3章コフート理論とひきこもり:人間は一生をかけて成熟する
第4章クライン、ビオンとひきこもり:攻撃すると攻撃が、良い対応をすると良い反応が返ってくる
第5章家族の対応方針:安心してひきこもれる環境を作ることから
第6章ひきこもりの個人精神療法:「治る」ということは、「自由」になるということ

「ひきこもりはなぜ『治る』のか?」で紹介されている家族の対応法のポイントを以下にまとめてご紹介します。

1. 共感と理解

ひきこもりの家族は、まず本人の気持ちや状況に共感し、理解することが大切です。コミュニケーションをしっかりとって、孤立感を和らげましょう。

斎藤先生は「肯定的な反応を返してあげることで、より現実的で成熟した向上心へと変化が起こる」、「共感的な反応があって初めてバランスが取れた発達が起こる」と共感することの重要性について書いています。
肯定的・共感的な反応と言っても、本人の言うことに必ず同意しなければならないわけではなく、大事なのは「あなたの話をちゃんと聞いているよ」「あなたの言いたいことはわかったよ」という態度を示すことが大事なんだと思います。

また、ひきこもっている人は周囲の人に対して非常に辛辣な批判をしたり、些細なことで家族を罵倒したりすることがあります。私の弟もそうです。
これは自己中心的な態度に見えますが、他人に対して否定的な人は決まって自分に対しても否定的な人が多いそうです。
そして、私たちが思った以上に本人たちは心が傷つき、疲弊しているとのことです。
だから、本人の発するものは「必ずある種のメッセージを含んでいる。本人が何かを訴えようとしているものとして周囲は理解する必要がある。」と斎藤先生は言っています。
本人から言われることをそのまま受け止めるのではなく、そのメッセージに本人のどんな気持ちが隠されているのか考える必要があるのですね。
ひどい言葉や腹が立つことを言われたときは、その時の感情に流されそうになりますが、なぜそんなことを言うのか考えるのが本人の気持ちを理解するポイントのようです。

2.コミュニケーションの促進

家族とのコミュニケーションを大切にしましょう。
日常的な会話や興味があることを共有することで、ひきこもりの本人との信頼関係を築きます。

ひきこもり本人は自己肯定感や自信を失った状態です。
では自信を回復するにはどうすればいいかと言うと、「他者との親密な関係」が必要だそうです。
それはひきこもりに理解のある親戚の人だったり、親の知人だったり…家族ではない「斜めの関係」の人が安定した関係を作りやすいそうです。

そうは言っても、現状私の家の場合だと、親戚の人は近くにいないし、本人はずっと家にいるので家族としか会話しないし、当事者や経験者が集まる「居場所」にはまだ誘うような環境・段階ではないし…と思ったのですが、
この「他者」というのは家族でも実現できるそうです。
そのために必要なのが「会話・言葉」

本人と十分な会話が交わされているとき、退行は極めて起こりにくくなるそうです。
逆に以心伝心で通じるような相手はもはや他者ではなく、以心伝心だけを受け入れていると簡単に子ども返りが起こりやすくなると斎藤先生は仰っています。
以前、うちでやりがちだったのが、食卓や本人の目に入るところに求人募集の紙などを置いておくことです。…悪い例、「これ見て悟れ」ですね。
斎藤先生の本を読んでからは、風通しの良い環境を意識するというか、本人との会話を意識するようになりました。
・本人に見て欲しい物や記事は必ず本人に声をかけて渡すこと
・顔を合わせたら「おはよう」の挨拶をすること
・何かしてくれることがあったら必ず感謝の言葉をかけること
以上のようなことを気をつけるようにしています。
大事なのは、会話を通じて本人に関心を向け続けることだそうです。

そして家族が他者性を出すために必要なのは「一番言いたいことを言わないこと」
「就職してほしい」・「社会復帰してほしい」ということは言わなくても本人が痛いほどわかっていること…だそうです。
言いたいけど「あえて言わない」という態度が本人にとって意外性を生み、他者性を実現できるそうです。

3.無理強いを避ける

家族は、ひきこもりの本人に対して無理強いをしないように心がけましょう。
プレッシャーやストレスをかけず、ゆっくりと支援を進めていきましょう。

斎藤先生は本人の目標を「就職する」にもっていくのではなく、
・どうすれば元気になるか
・どうすれば本人がくつろぐことができて最終的に元気になれるか
・どうすれば個人としてより良い状態になれるか
を目標に考えることが大事だと仰っています。
最近、グループミーティングに参加して、息子さんが10年以上ひきこもっている家族のお母さんが、「本人とちゃんと会話ができるようになって、本人から昔いじめにあったことやコミュニケーションが苦手なことなどの話を聞けるようになるまで3年かかった」と仰っていました。
うちでは本人からそんな話を聞いたことがないし、まだそういうことを聞ける段階に来てないんだと痛感し、本人への理解や会話がまだまだ足りてないなと感じました。
本人の年齢としては40歳近くなっているので、焦るのですが、「就職」というワードを持ち出しては今まで築いた関係が壊れてしまうと思うので、コツコツと会話やコミュニケーションを積み重ねていきたいところです。

4.専門家の協力

家族は、専門家の助言を仰ぐことも検討してください。
心理カウンセリングや社会復帰プログラムなど、適切なサポートを受けることが重要です。
これらのアプローチを通じて、ひきこもりの家族は本人をサポートし、共に向き合っていくことが求められています。

斎藤先生は精神科医なので、当然のことかもしれませんが、精神科などの病院へ本人を通院させることを勧めています。
また、相性が良ければ病院の先生が本人の自信を回復させる「他者」になるかもしれません。

しかし、うちの地元周りの病院を調べたのですが、近くにひきこもりに関して相談できそうなカウンセリングや病院はありませんでした。
まずは、家族が保健センターのグループミーティングや地域の家族会に参加することで、ひきこもりに関して理解を深めていくことを継続していきたいと思っています。

以上、「ひきこもりはなぜ「治る」のか?」の要約でした。

気になる方は是非お手にとってみてください。

 

感想

家族でのグループミーティングをここ1年ぐらいさぼっていました。
毎回お互いの悩みを話しては特に解決策もなく…というミーティングに飽き飽きしていたのもありますし、家族それぞれの仕事が少し忙しくて…ということもあり、継続したミーティングの参加から足が遠のいていました。
しかし今年に入って、久しぶりに斎藤先生の本を読んで(古い本ですが)また勉強をするために家族でグループミーティングに通い始めました。
1年前と比べてあきらかに参加メンバーのひきこもりに関しての知識のレベルがあがっており、職員さんの話も勉強になることが多く、継続して勉強する意義を再確認しました。
今回ご紹介した本で、要約を紹介しつつも、だいぶ自分の思ったことを書かせてもらいましたが、斎藤先生の本は読むたびに色々なことに気づかされます。
それは、うちの家族と本人との関係が一歩進んで、次のステップに進むための気づきがあったからかもしれません。

うちでは状況変わらず弟は家にひきこもりのままです。
しかし、本人が週に1回父親と山登りに行ったり、夜リビングでTVを見ながら食事をして母親と会話したり、コミュニケーションが増えてきています。
私(長女)と弟の会話も昔よりは増えている気がします。
今後もコミュニケーション・会話を大事に、なおかつその会話の内容もより本人に寄り添えるようなものにしていきたいと思います。

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